コラム
日本に適法に滞在している外国人は、基本的に、保有する在留資格にかかる活動をしていることが在留の前提となっています。
そのため、通常、在留資格に係る活動を継続して3か月以上(一部の高度専門職にあっては6か月)行わないで在留している場合、正当な理由がある場合を除き、法務大臣は在留資格を取り消すことができるものとされています(入管法22条の4第1項6号)。
また、在留期間の更新を行う場面では、在留資格該当性(本邦に滞在して予定する活動が当該在留資格に係る活動に該当するものであること)が審査されます。
そのため、就労系の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」や「技能」などの資格)で在留する外国人労働者が解雇・雇止めを受けた場合、在留資格に係る活動を継続していない、そのような活動をする余地がないとして、在留資格を取り消されたり、在留資格の更新が認められないといった不利益を受けてしまうのではないかということが懸念されます。
本コラムでは、そういった懸念に答え、解雇・雇止めをされた場合に在留資格はどうなるのか?就職活動を行うことはできるのか?と言った点について解説をいたします。
目次
1.会社都合退職の場合、就労意思があれば在留の継続はある程度可能
入管は、このような外国人労働者に関し、「雇用先の倒産・業務縮小等により、自己の都合によらない理由で解雇、雇止め又は待機を通知された場合」、以下のとおりの取り扱うことを定めています(令和3年7月19日時点)
- 本邦で就職活動中の者については、現に有する在留資格のまま、在留期限までの在留を認める
- 在留期限の到来後も就職活動を継続する目的で在留を希望する場合は、期限到来前まで就職活動を行っていることが確認され、在留状況に問題ない等許可することが相当であるときは、「特定活動」の在留資格が許可される
- 当該「特定活動」への在留資格については、在留期間の更新は認めない
すなわち、このような外国人については、就職活動を継続する場合には、在留期限までの在留を認める(取消は受けない)ものの、更新は認められず、特定活動の資格に変更したうえで数か月程度の猶予が与えられるという運用が採用されています。
2.就職活動を行う場合の注意点
就労制限がある外国人労働者は、上記2で述べた運用に従って就職活動を行う場合には次に述べるポイントに注意が必要です。
(1) 退職・採用時それぞれで入管への届出が必要
退職した場合、及び新たに雇用契約を締結する場合、当該事由発生時から14日以内にその旨の届出を行う必要があります(入管法19条の16)。
なお、保有する在留資格が高度専門職1号である場合、勤務先を変更するにあたっては在留資格の変更許可申請が必要になりますのでご注意ください。
(2) 不法就労にならないように注意
外国人を採用する会社が必ずしも在留資格のことを理解しているとは限りません。
そのため、採用後に命じる業務として、現在の在留資格では資格外就労に当たるものを予定することがありえます。
資格外活動を行った場合、会社の命令であっても外国人労働者が刑事処罰される可能性があり、更新の場面でも不利に斟酌されてしまいます。
(3) 就職活動中のアルバイトについて
就職活動中、生活費を捻出するためにアルバイトをしたいと考える方もいらっしゃると思います。
この場合、資格外活動許可を得ることにより、1週について28時間以内であれば、当該在留資格に係る活動に該当しない仕事に就くことができます。
ただし、ここにいう28時間とは、当該外国人が行う仕事全体で28時間以内である必要があるため、例えばアルバイトを掛け持ちする場合などでは、アルバイト一つ当たり28時間以内であればよいとはならないことにご注意ください。
3.終わりに
もっとも、就職活動を行うのではなく元の職場に復職することを求めたい方、就職活動が功を奏さず解雇を争いたい方もいらっしゃいます。
また、懲戒解雇を受け、会社都合退職として扱われない場合、上記2で述べたような取扱いの対象外になってしまいます。
そこで、次回は、外国人労働者が解雇の効力を争いたい場合に在留資格との関係でとりうる手段について、ご説明をいたします。
報道によれば、2020年は、新型コロナウイルスの流行によって解雇や完全失業者が増加し、この傾向は同年末時点でも継続しているものとされています。
使用者は会社の経営が悪化するなどして人員削減の必要性がある場合には、整理解雇によって労働者との雇用関係を解消することができ、コロナによる経営不安も整理解雇の理由にはなりえます。
そこで、本コラムでは、コロナによる経営悪化が整理解雇のどういった要素に影響を与えるかをご説明したうえで、労働者・使用者がそれぞれが注意すべきポイントを解説いたします。
目次
1 整理解雇の基礎知識(有効・無効を分ける要素とは)
- 人員削減の必要性
- 解雇回避努力の有無・程度(一例として、新規採用の停止や希望退職者募集等)
- 人選の合理性
- 解雇手続(労働者に説明・協議を尽くしたか)の相当性
そして、整理解雇は通常の解雇(普通解雇)と異なって基本的に労働者側に非がないにもかかわらず、労働者に対して雇用関係の解消と言う不利益を課すものであることから、その審査は普通解雇よりもは厳しく行われる傾向にあります。
このような整理解雇に関する規制は、その理由がコロナウイルスの流行という未曽有の事態を原因とする場合でも異なるものではなく、人員削減の必要性が肯定される職場が多いとは考えられるものの、他の要素の検討や、4要素の存在を裏付ける証拠の存在は有効性(不当解雇であるか否か)を左右するものといえます。
2 コロナウイルスの流行を理由とした整理解雇のポイント
(1) 助成金の受給と解雇回避の努力の関係
厚生労働省は、新型コロナウイルスの流行を受けて、雇用調整助成金について助成額、助成率を引き上げるなどの特例措置を設けています。
また、このような国の支援策とは別に、各事業者について独自の支援策を実施ている地方自治体もあるようです。
使用者側が解雇を回避する努力を講じたかは整理解雇の有効性を分ける重要な要素(4要素の2つ目)とされていますが、こういった支援制度が存在する場合には、これらの支援制度を利用してもなお解雇が必要とされる場合でないと、整理解雇の有効性が否定される可能性が高まるものと言えます。
現に、新型コロナウイルスの影響による業績悪化を理由にタクシー会社が行った整理解雇が争われた仮処分申立てに関し、雇用調整助成金が利用されていないことを理由の一つとして整理解雇を無効とした決定が下されたとの報道もあります。
したがって、事業者としては、整理解雇前にこのような行政の支援策の利用検討しておくことが肝要です。
(2) コロナであるからといって説明不足が許されるわけではない
コロナ関連の解雇の中には、使用者側がなんらの説明なく解雇を通告されたという話を耳にします。
仮に新型コロナウイルスの流行による業績悪化や解雇された従業員の担当業務の喪失が真実であったとしても、十分な説明もなくに整理解雇を行った場合は整理解雇が無効とされる可能性が高まるものと考えられます。
3 有期雇用の労働者特有のポイント
整理解雇が行われる場合、有期雇用の労働者は無期雇用の方に比べて解雇の対象にされやすい傾向にあります。
(1) 契約期間中の解雇、無期雇用の解雇よりも認められにくい
労働契約法上、有期雇用労働者の契約期間途中の解雇は、「やむを得ない事由がある場合」でないと認められないとの規制が設けられています(労働契約法17条1項)。
(2) 契約期間が通算5年以上の労働者は無期雇用に転換を求めることが可能
同一使用者間の二つの雇用契約の通算契約期間が5年を超える場合、有期雇用労働者は雇用契約を無期雇用へ転換する権利を取得します(労働契約法18条1項)。
そして、労働者が無期転換権を行使した場合、使用者は雇用契約を解消するには雇止めではなくて解雇を行う必要がありますが、有期雇用の雇止めよりも無期雇用の解雇の方が厳しく判断されるため、労働者としては雇用関係の解消を防ぎやすくなります。
そのため、雇止めを予告された労働者が無期転換権が取得している場合、雇用契約終了前に無期転換権を行使して、リストラ目的の雇止めに対抗することが考えられます。
4 労働者・使用者の対応それぞれの注意点
(1) 労働者側の注意点
労働者側には、解雇を宣告されたり、退職を勧奨された場合に、速やかに弁護士に相談されることをお勧めします。
また、実態は会社による整理解雇であるものの、会社側が補助金支給に影響を与えないようにするため、労働者側に退職届を書かせて提出するよう強要することがあり、労働者としても断ることができずに退職届を提出してしまうことがあります。
このような場合であっても、当時の状況によっては退職届の提出は無効であるなどとして争える可能性があるため、このような事情がある場合には特に弁護士に相談して、対応を検討された方が良いでしょう。
(2) 使用者側の注意点
上記のとおり、整理解雇は要件が厳しいところもあるため、まずは労働者に説明を尽くし、また退職金を支給するなどして、合意退職の途を探ることがリスクを避けるうえで無難と考えられます。
また、経営不安(人員削減の必要性)や解雇回避措置を講じている場合であっても、整理解雇を拙速に行ってしまうことで解雇の有効性が否定されることもありうるので説明を尽くす必要があります。
このような説明や解雇回避措置の塩梅については個別具体的な検討が必要であるため、整理解雇を検討されている場合、特に複数名の労働者について検討されている場合には、事前に弁護士へ相談されることをお勧めいたします。
相談・依頼をご検討されている方へ
【労働者側:労働問題】
【使用者側:労働問題】
目次
1 前提:懲戒処分は前もって懲戒事由と懲戒手段を定めなければならない
2 東京メトロ事件判決の概要
(1) 事件の概要
(2) 裁判の展開
- 痴漢の内容や20万円といった処罰内容等を踏まえると、痴漢として処罰対象となる行為としては、「悪質性の比較的低い行為である」こと
- 使用者が痴漢行為撲滅を積極的に取り組む鉄道会社であったものの、マスコミの報道等はなく、会社の「企業秩序に対して与えた具体的な悪影響の程度は大きなものではなかった」
- 社員が示談の成立を試みたものの、不調に終わったこと
- その他の社員の勤務態度に問題はないこと
- 当時の会社が、懲戒処分(諭旨解雇)を決定するに際して、痴漢行為を理由に起訴されたかどうかだけを基準としており、社員に弁明の機会が与えず、具体的な事案の検討もしなかったこと
3 「痴漢では解雇できない」と一般化することはできない
(1) 普通解雇であれば有効になる余地はある
(2) 会社の解雇手続における不備の存在
(3) 痴漢の悪質性にも差異がある
(4) 2014年の事件であること
4 まとめ
(1) 使用者側が気を付けるべき点
(2) 労働者側で考えるべき点
近頃は雇用にも色々な形が増え、非正規、有期雇用の労働者の方も年々増えています。そのような有期雇用労働者の中には更新を1回しか受けられなかったり、更新が1回もされないまま契約を切られて(雇止めを受けて)しまう方がいらっしゃいます。
このような場合、雇止めが無効であると争うことはできないのでしょうか。
今回のコラムでは、労働者の立場にたって、更新がされたことがない又は更新が数回程度しかない有期雇用労働者の雇止めについて、どのような場合に争うことができるのかを雇止め規制の仕組みとともに解説します。
目次
4.雇止めの目的が専ら法律上許されないものである場合、労働者は争える余地がある
1.労働契約法19条による規制
この法律は、次の2つのいずれかに該当する有期雇用について、客観的に合理的な理由がない限り、使用者が雇止めすることを禁じています。
(1)過去に反復して更新されたことがあり、雇止めが無期雇用の解雇と社会通念上同視できる場合(19条1号)
(2)契約期間満了時に更新がされるものと期待することについて合理的な理由がある場合(19条2号)
更新が1回以下の雇用では、(1)場合における「反復して更新された」という要件を満たすことは基本的にありません。
そのため、(2)の場合、すなわち、更新がされるものと期待することへの合理的理由が認められるかが、雇止めを争えるかの鍵となります。
2.更新の期待への合理的理由の判断材料
更新を期待する合理的理由の有無は、最高裁平成3年6月18日第三小法廷判決(進学ゼミナール予備校事件、労判590号6頁掲載)を始めとした過去の裁判例に照らすと、以下に述べるような事情から判断される傾向にあります。
・雇用の臨時性・常用性
・更新の回数
・雇用の通算期間、
・契約期間の管理状況
・雇用継続の期待をもたせる言動・制度の有無
など
このような傾向を見ると、過去更新されたことがあるかは期待の有無を判断する上で重要な事情であることは間違いなく、特に更新がされていないケースの場合は労働者が雇止めを争うことは基本的に難しいものであると言えます。
3.更新ゼロ・1回でも期待に合理的理由があるとされたケース
しかし、労働者にとって争うのが難しいと言っても、以下に紹介するような、更新が1回以下の有期雇用労働者の更新が認められたケースもあります。
(1)更新がゼロ回でも雇止めを違法としたケース(2014年の裁判例)
更新が1回もされたことがないにもかかわらず、労働契約法19条2号の適用を認めた事案としては、福岡高裁平成26年12月12日判決(労判1122号75頁掲載)があります。
この事案は、1年の期間を定められた短大講師に対する初回の更新拒絶が問題となったもので、2年間を通してキャリア教育を実施するキャリア支援科目を新設するなどして、「複数年にわたる一貫した学生の教育が予定され」ており、新規採用教員について1年で契約が終了するとなると、学校運営に重大な支障が生じるとみられること、採用面接時にも更新の限度とされている3年間は、契約は原則として更新されるような説明がされていたこと等を考慮し、更新拒絶を違法なものと判断しています。
この事案は、原告である講師が担当する業務(講義)の特徴に着目して雇止めが否定されたものと考えられ、雇止め効力を争う際には、予定されていた業務の性質(特徴)を具体的に検討することが特に重要であることを示しているものと言えます。
(2)更新1回で雇止めを違法とした事例(2020年の裁判例)
最近でいえば、更新が1回(1年ごとの更新)のみであった有期雇用契約について労働契約法19条2号の適用を認めた、東京地裁令和2年5月22日判決(日の丸交通足立事件、労判1228号54頁掲載)の事案もあります。
この事案は、タクシー会社において、定年(67歳)後も嘱託として雇用を継続した運転手従業員について、定年後の運転手を嘱託として雇用する扱いがされていたこと、会社のタクシー運転手のうち70歳以上の運転手は16%に上っていたこと、定年退職後の嘱託雇用では契約書や同意書の作成がされることなく1回の更新がされたこと等の事情を考慮して、更新継続の期待に合理的な理由があるものと判断されました。原告の嘱託雇用条件であれば2回以上の更新が必要となる70歳以上の運転手が会社のタクシー運転手の相当割合を占めていることは、少なくとも70歳までの雇用継続の期待が高いことを裏付ける事情と言えます。
また、定年退職・嘱託による再雇用と更新の手続において契約書類が作成されないことは、更新手続が形骸化し、更新の可否が十分な審査がされることなく更新されていたことを裏付ける事情と位置付けられます。
このように、定年退職後の再雇用の場面では、似たような立場の労働者の方が過去に多くいるものと考えられ、そのような有期雇用の更新が過去どのように運用されてきたかを検討することも、雇止めの効力を争う際には重要であるものと言えます。
4.雇止めの目的が専ら法律上許されないものである場合、労働者は争える余地がある
これ以外にも、雇止めの目的が法律上許されない違法・不当なものである場合には、労働者側は雇止めを争う余地があります。
一例としては、妊娠・出産が挙げられます。男女雇用機会均等法9条3項は、妊娠や出産等を理由とした女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないものと定めており、この「不利益な取扱い」には雇止めも含まれるものとされています。したがって、専ら妊娠や出産が理由としか考えられない雇止めは(例えば、当該女性社員以外に雇止めされた者がいないといった事情は、このような理由を推測させます)、無効となり、労働者には争う余地があります。
他方、使用者からみれば、妊娠や出産等を行った有期雇用社員の雇止めを行う場合、それが理由であると疑われないよう、雇止め対象となる労働者の選定経緯を十分に検討、記録化し、また説明を行う必要があると考えられます。
5.実態が試用期間である場合にも争える余地がある
よく有期雇用と混同される雇用形態として、試用期間が定められた雇用契約というものがありますが、実は、法律上、有期雇用とは別の性質を持つ契約として扱われています。
試用期間付きの雇用契約は、使用者が試用期間に限って雇用契約の解約権を留保した契約とされています。そして、試用期間は、一般的に、(1)従業員の身元調査の補充を行い適格性を判断するためや、(2)期間中の勤務状態を観察して、適格性を判断するための期間とされており、解約権の行使が認められるのも、その契約における試用期間の目的に沿った調査・観察の結果、適格性を欠くものと認められた場合に限られます。言い換えれば、試用期間が満了したからといって自由に正式採用を拒否(解雇)することは法律上認められておらず、その趣旨に反した正式採用拒否は無効になります。
そして、有期雇用契約の中には、最初の期間の定めが試用期間と同様の目的で定められていることがあります。しかしながら、仮に契約書等で有期雇用であると説明されている場合であっても、 最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決(神戸弘陵学園事件、民集44巻4号668頁掲載) によれば、定められた雇用期間の「趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものである」場合は、期間の満了により雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意があるなどの特段の事情が認められる場合を除き、試用期間として扱われることになり、先ほど述べたような、試用期間満了時の解約権行使と同じ規制を受けることになります。
そのため、実態が試用期間付きの雇用である有期雇用は、更新が1回もされていない場合であっても、当該契約における試用期間の目的に照らして適格性がないと認められるような場合でない限りは、更新拒否(本採用拒否)をすることができないということになります。
6.おわりに
以上に見たとおり、更新が1回以下の労働者の雇止めであっても、労働者が争う余地(雇止めが無効となる余地)は残されています。
もっとも、更新の合理的期待の有無、試用期間・有期雇用における期間の定めの判別等で判断材料になる会社側の説明は、口頭ベースのものも多く、言った言わないの争いになることが予想されます。
そこで、労働者・使用者ともに、できる限りやり取りを書面化して、あとの争いに備えておく必要があることをおすすめします。
そして、弁護士に相談していただくことで、自己に有利な証拠の作成・収集ができ、また不利な行動を取ることを防ぐこともできます。そのため、争いになる可能性がある場合には、早急に(例えば、労働者であれば雇止を仄めかされてすぐ、使用者であれば雇止めを検討されているタイミング等)弁護士に相談されることをおすすめします。
→解雇・雇止め問題の相談・依頼を検討されている方は、こちらの説明もご参考ください
→解雇・雇止め問題の弁護士費用をお知りになりたい方は、こちらをご覧ください
家族、恋人、仲の良い友人が逮捕されたことを知った場合、ご本人の状況が心配な方、ご本人から話を聞きたい方は大勢いらっしゃるものと思います。
また、面会の制限については、捕まっている方によって対応が変わることがあり、逮捕された方との面会のご経験がある方であっても、勝手が異なる場面に出くわすこともあり得ます。
そこで、本コラムでは、逮捕された方との面会ができる時期、面会が禁止される場合、禁止について弁護人ができる活動について、広く解説いたします。
目次
1 逮捕直後の面会について
まず、弁護士等以外の方(ご家族、恋人、友人等)が逮捕直後の被疑者との面会や物の授受を行うことは、禁止されていることが一般です。
法律上、勾留(逮捕後72時間以内に請求される、拘束の延長決定手続)をされている被疑者・被告人は法令の範囲内での弁護士等以外の方との面会を行う権利が認められています(刑事訴訟法80条)。
警察などの捜査機関は、この規定を裏返して考え、勾留がされる前の被疑者は、面会を認めるべき者の対象外として扱っています。
もっとも、面会は、法令の範囲内で許可することまでを禁止されているわけではないため、例えば少年事件で逮捕直後の被疑者と親の面会を許可するなど、例外的な取扱いをすることもあります。
他方、勾留後であれば、上記の法律のとおり、被疑者は弁護士等以外の者と面会をすることが権利として認められ、収容される施設の規則(受付時間、面会時間の制限、人数の制限等)に従って面会を許可されます。
2 面会が一律に禁止される場合
もっとも、勾留がされた後であっても、裁判所が、弁護士以外の者との面会や物の授受が一律に禁止することがあります(刑事訴訟法81条)。
このうち、面会を禁止することは「接見禁止」と呼ばれており、2018年時点では被疑者が勾留を許可された場合、37.7%が接見禁止の決定を受けています。
接見禁止決定が出された場合、弁護人は、その裁判所の決定に対して撤回を求める不服申立てをすることができます。
3 接見禁止はいつまで続くのか
通常、被疑者の接見禁止は「公訴提起が至るまで」(起訴されるまで)といった期限が設けられています。
この点、接見禁止の要件である逃亡、証拠隠滅をすると疑うに足りる相当な理由は、捜査や裁判の進展に応じて変化しうるものとされているため、既に不服申立てが棄却された場合であっても、事情の変化後に改めて不服申立てを行った場合、申立てが認められる可能性があります。
そこで、接見禁止が継続する場合、弁護人としては、事情の変化に敏感になり、粘り強く不服申立てを続けていくことが肝心であると言えます。
相談・依頼をご希望の方へ
本ページ担当弁護士は、接見禁止決定を争う場合、弁護人の活動により接見禁止決定の解除が得られた場合に、追加で報酬を頂戴することはありません。
タイムカードもない、労働時間の管理アプリも導入されていない、日報・日誌の類も作成されてないなど、会社が労働者の労働時間や労働内容を全く記録していない職場があります。
このような職場にお勤めの方の中には、証拠がないから残業をしても残業代は請求できないとお悩みになっている方もいらっしゃるでしょう。
本コラムでは、そのような職場で残業時間を証明するには、どのような方法(証拠)が考えられるかを解説いたします。
目次
1 働いていたことの痕跡を証明する
まず、働いていたことの痕跡、すなわち「少なくともこれくらいの時間には(これくらいの時間までは)働いていた」と言える証拠がないかを探してみましょう。
例えば、職場から自分用のパソコンを支給されている方の場合、パソコンの起動時刻、シャットダウン時刻のログデータを利用することが考えられます。
自分用のパソコンが支給されているのであれば、基本的には自分以外がパソコンを起動・使用することはないため、起動時刻までには少なくとも出勤していた、シャットダウンの時刻までは少なくとも退勤していなかったといえ、最低限の労働時間を証明できる可能性があります。
また、オフィス内に入るためにセキュリティカードが導入されているような場合、セキュリティカードの使用時刻のデータが警備会社に残されていることがありえ、これを活用することも考えられます。
そのほか、会社内でしか使用できないアカウントから送られていたり、会社内にいることを前提とした内容をもつ仕事関係のメールやアプリのメッセージがある場合、その時間は最低限働いていたといえるため、労働時間を推測させる証拠として利用できる可能性があります。
2 働き始める直前・働き終わった直後であることを証明する
さらに、働いていた証拠ではなく、働き始める(出勤)直前・働き終わった(退勤)直後であったことを示す証拠を活用することも考えられます。
例えば、退勤時にご家族へのLINE等で「今から帰る」というメッセージを送る習慣のある方もいらっしゃいますが、このようなメッセージは、退勤時刻を推測させる証拠になると考えられます。
これ以外にも、IC乗車券の履歴を使用して通勤している場合には、その履歴を出勤・退勤時刻を推測させる証拠として活用できる可能性があります。(ただし、遡れる履歴の件数・期間に上限があるため、こまめに保全しておく必要がありますので、ご注意ください。)
3 自分で証拠を作っておく
それでは、このような証拠が全くない場合では、残業代を証明する手段はないのでしょうか。
この場合、自分で作成したメモ・記録を証拠として利用することが考えられます。
もちろん、これらの証拠は労働者側が自由に作成できるため、これまで上げたような労働者以外が作成した証拠、残業代請求と無関係に作成された証拠よりは、証拠としての力が弱いと判断される傾向にあります。
もっとも、日誌のように、労働時間と共に、業務の内容やその日の出来事を具体的に書いておくことにより、事故的に作成することは困難であるとして、その内容が信用されやすくなります。
また、前にご紹介したようなIC乗車券の記録、メールやLINE等が、断片的で労働時間を証明するのに不十分・不足する場合であっても、自身が作成したメモ・記録と一致し、その内容を裏付けることができるようなものである場合、メモの内容を信用させる手助けになると考えられます。
4 証拠を収集する方法
これまでご紹介した証拠の中には、いざ残業代を請求しようという気持ちになっても、収集が困難・不可能になっていることがあり得ます。
例えば、パソコンの起動に関するログ等のデータは、退職後に消去されてしまって収集が困難になることが考えられます。
そのため、在職中に自身で収集して保全を行ったり、退職直前に残業代の請求をすることを告知して使用者がデータを消去しないよう働きかける(あるいはその両方)といった手段を取ることが考えられます。
また、使用者が残業時間の証明を妨害するためにデータを破棄をする可能性が高い場合、裁判所の証拠保全を申立て、裁判所が命令を出すことにより、証拠を収集することができます。
他方、警備会社のセキュリティ記録のように第三者が保存しているデータの場合、残業代請求妨害のために破棄される危険はないものの、労働者の方が使用者の同意なく収集することは困難であると考えられます。
このような証拠については、残業代を依頼した弁護士による照会(弁護士会照会)や裁判提起後の裁判所による照会(調査嘱託)等によって、収集を実現できる可能性があります。
5 弁護士に相談することのメリット
ご紹介したように残業時間の証明に活用できる証拠は、職場によって変わり、いろいろなものが考えられます。
労働事件を取り扱う弁護士に相談することは、その職場においてどのような証拠が収集できそうかということを見つけ出す近道になると考えられます。
また、自身でメモを作っておく場合でも、それが裁判所に信用されるような内容にするためには、裁判の経験がある弁護士の助言を得ることが効果的です。
さらに、証拠の中には、証拠保全や弁護士会照会、調査嘱託など弁護士に依頼しなければ、選択することが困難・不可能な手段でしか収集できないものがあることも考えられます。
残業時間の証拠が見つからない・集められないことでお悩みの方は、弁護士に相談することをお勧めいたします。
相談・依頼をご希望の方へ
→未払賃金・残業代請求の相談・ご依頼を希望の方は、こちらもご参考ください
→未払賃金・残業代請求をご依頼された場合の弁護士費用は、こちらをご確認ください