刑事告訴
目次
告訴の基礎知識
告訴権とは
告訴とは、被害者等が犯人の訴追と処罰を求める意思表示のことを言います。法律上、告訴は、告訴権を持つ者に限って行うことができるものとされています。そして、この告訴権を持つ者は、原則として、被害者(被害者が死亡したときは、その配偶者、直系親族、兄弟姉妹)、法定代理人に限定されています(例外の一つとして、定代理人やその配偶者が被疑者である場合などでは、親族にも独立の告訴権が認められているというものがあります)。このように、行うことができる者が限定されているという点で、「犯罪があると思料するとき」に何人でもできるものとされる告発とは区別されます。その他、告訴と類似のものとしては被害届がありますが、これは犯罪の被害に遭ったと考える者が、その被害の捜査機関に申告する届出のことを指し、処罰を求める意思表示までは含まれていない点で、告訴(告訴状)とは異なるものと位置づけられています。
そして、告訴は、次に述べるような効果が認められる点で、告発や被害届と区別することができます。
親告罪
告訴の効果として最も一般的に認識されているものは、親告罪の処罰を可能にするというものであると考えられます。犯罪の中には、起訴をするためには告訴を必要とするものが存在し、このような犯罪を親告罪と呼びます。近年、強制わいせつ罪等の性犯罪や著作権法違反(著作権等侵害)等の一部の犯罪につい非被親告罪化が図られましたが、現在でも過失傷害、器物損壊、名誉棄損、未成年者略取、親族間の窃盗、横領罪など、親告罪とされている犯罪が存在します。
捜査への影響
被害届と異なる告訴の効果としては、捜査への影響が認められることにもあります。告訴又は告発があつた事件については、「特にすみやかに捜査を行うように努める」ものとされており(犯罪捜査規範67条)、告訴は捜査機関の捜査進行に一定の影響を与えるものと認められます。
告訴をするには
司法警察員である警察官は、告訴をする者があったときは、「管轄区域内の事件であるかどうかを問わず、……これを受理しなければならない」ものと定められています(犯罪捜査規範63条)。これは、適正な告訴があった場合には、警察官は告訴を拒否することはできないということを意味しています。
しかしながら、告訴状が提出がされた場合であっても、すべてについて捜査がされるわけではありません。そもそも、犯罪に該当しないものと考えられる行為については、告訴状を提出しても、受理され、捜査がされることはないものと考えられます。また、個人の権利利益を侵害する犯罪は、主に、被害者の意思、証拠状況、事件捜査価値という三つの面を考慮して、捜査(刑事的介入)するかが判断される傾向にあるものとされています。
告訴の取消し
告訴は、起訴がされるまでであれば、取り消しをすることができます(刑事訴訟法237条1項)。そして、告訴を取り消した場合、再び告訴をすることはできません(同条2項)。この点、多数の共犯者がいる親告罪の場合、一部の共犯者に対する告訴及びその取消しは全体に対して効力が生じるため(同法238条1項)、一部の加害者との間で示談する際はこの点を留意する必要があります。
よくあるご質問
Q:会社内の横領について警察に相談したところ、民事不介入と言って被害届や告訴の提出を拒否されましたが、このような対応は正しいのでしょうか。
刑事訴訟法等の各規程を見ても、民事的な請求をすることのできる紛争であることを理由に、警察が立ち入ることができないなどと定めた規定はありません。そもそも、詐欺罪や横領罪等の一部の犯罪は、当然、損害賠償請求等の民事上の請求をすることもでき、警察が介入することができないとすると、多くの犯罪が介入できないことになってしまいます。
もっとも、例えば貸したお金や物を返さないという事件などは、そのことのみからは必ずしも犯罪とは言えないため、警察が介入してくれるとは限りません。しかし、ここで警察が介入しないのは、あくまで犯罪性がないと捉えられたためであると考えられ、民事紛争であるから介入しないわけではないという点に注意が必要です
Q:役員が会社の資金を横領したため、給料が支払われませんでした。告訴をすることはできないでしょうか。
この事例の場合、残念ながら告訴をすることができないものと考えられます。上記のとおり、告訴を行うことができるのは告訴権を持つ者に限られています。このような事件において告訴権の主体となることができるのは会社であり、社員や役員個人は告訴権がなく、告訴をすることはできません。もっとも、告訴権がなくても告発をすることはでき、不起訴処分がされた場合には不起訴処分の事実やその理由について確認することができます(刑事訴訟法260条、261条)。
弁護活動のイメージ例
1.着手前(相談)
被害の内容や証拠資料の有無を確認し、どのような犯罪が成立する可能性があるか、告訴に向けてどのような資料を準備しておくことが有用であるか等についての見通し、考えをお伝えするとともに、お見積りをいたします。
見通し、お見積り等について納得いただける場合には、ご契約をいたします。(相談の場で契約するか否かをお決めになっていただく必要はございません。)
2.着手後
資料を一通り確認し、事案の整理や説明のための資料(場合によっては告訴状)の作成を進め、これが完了でき次第、管轄の警察へ事前に伝えたうえで、被害相談へ向かいます。この際、被害者(被害者が会社である場合は担当者)にご同伴いただきます。
この相談において、警察として、その段階で告訴を受け付けることができるか、捜査を開始することができるか等を確認し、こちらに不足等があれば、その点を確認して、次回の準備を進めます。このような相談を繰り返し、告訴の受理を図ります。
ご料金
相談料 | 無料(45分) ※被告人ご本人が勾留されている場合、接見費用として3万円3000円(実費別)を頂戴します |
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着手金 | 22万円(税込)~ ※事案の内容によって予想される業務量が大きく異なるため、が全く異なるため、22万円を最低着手金として、事案に応じて金額をお決めいたします。 |
報酬金 | 22万円(税込) ※依頼着手後に捜査が開始され、検察官送致がされた場合、告訴状が受理された場合等、事案に応じて報酬金の発生条件を決定いたします。 |