違法薬物事件(大麻、覚醒剤など)
目次
違法薬物事件の基礎知識
覚醒剤、大麻、麻薬、向精神薬など、日本では、使用による中毒性・身体への悪影響を理由に、法定の除外事由なく所持、使用等をすることが禁止されている薬物があります。また、近年ではこのような規制薬物又は指定薬物に化学構造を似せて作られ、これらと同様の薬理作用を有する物品を「危険ドラッグ」と呼称し、順次法規制がされるようになっています。このような違法薬物・ドラッグに関する犯罪は薬物事犯と総称されています。
行為の類型
薬物事犯に該当する典型例としては、違法薬物の所持や使用が挙げられますが、法規制されている行為はこれだけではありません。製造(栽培)行為、輸出・輸入行為、譲受・譲渡行為など、様々な行為が違法薬物の蔓延を防止するために規制をされています。
薬物の種類・行為の内容によって刑が大きく変わる
薬物事犯は、例えば大麻よりも覚せい剤の方がより厳罰に処されるというように、同一の行為であっても、薬物の種類によって法定刑の重さが変化することがあります。また、行為が営利目的のものであるか否かによっても、行為の悪質性等が異なるために処罰の重さが変わってきます。そのため、薬物事犯の中でも、どのような薬物の、どのような行為による犯罪であるかによって、処罰の重さに関する見通しは全く異なってきます。とくに、営利目的の輸出・輸入行為、製造行為については、覚醒剤であれば、無期懲役刑も下すことができるものとされています(無期又は三年以上の懲役)。
知らずにかかわってしまう危険がある
薬物事犯については、違法薬物に関わらないように生活していれば疑われることはないとお考えの人も多いと思われます。しかしながら、違法薬物が見つかる(証拠として確保される)ということがなくても、逮捕・有罪となるケースはあります。例えば、警察官が不審な行動等を理由に令状を取るなどして行った尿検査について、違法薬物の陽性反応が出た結果を証拠として使用の罪について有罪となるケースがありますが、過去、別検体が混入した可能性があるなどとして、無罪となった事件も存在します。
また、輸出・輸入行為については、他人から旅行等のついでとして運搬を頼まれた物の中に違法薬物が隠されていたなどとして、意図せず罪に問われてしまうケースもあります。
よくあるご質問
Q:薬物事犯では不起訴と言うのはありうるのでしょうか
不起訴には、有罪するに足る証拠がない嫌疑不十分や嫌疑なし、有罪するに足る証拠はあるが処罰を求める必要性が小さいとされる場合に下される起訴猶予など複数の種類があります。薬物事犯も含めて、有罪にするに足る証拠がない場合には、検察官は一般的に嫌疑不十分を理由に不起訴とするものと考えられます。
これに対して、有罪に足る証拠があると検察官が判断している場合には、極めて微量の大麻等の単純所持(営利目的でない所持)の事件を除き、ほぼ起訴がされているように見受けられます。
Q:釈放される見込みはあるのでしょうか
起訴・不起訴の処分前に釈放を求める場合、検察官には勾留を請求しないように、裁判官には勾留を許可しないように(又は許可の判断を破棄するように)求める活動があり得ます。この点、薬物事犯については、争いのない事件であったり、初犯者の単純所持や使用の事件であっても、概ね、被疑者勾留満期までは拘束を続けられる傾向にあります。すなわち、薬物事犯で逮捕された場合、多くの方が20日以上の身体拘束を受けているものと見受けられます。
他方、起訴後については、保釈請求が可能になり、これによって釈放を求めることが一般的です。この点、薬物事犯の否認事件、とくに営利目的が疑われる事件では、関係者への口裏合わせ等の接触、証拠の隠滅行為等を疑われることについて相当な理由があるとして、保釈が認められないことが多々あります。もっとも、争いのない事件、とくに営利目的の絡まない所持や使用の場合であれば、保釈が許可される可能性は高まります。また、無罪を主張しているような事件で、実刑が予測される場合であっても、裁判の進行度によっては保釈が許可されることもままあります。そのため、釈放を希望するのであれば、仮に一度保釈請求が許可されなくても、裁判に進展があるなどの事情の変更があった場合には、適宜保釈請求を行うよう、弁護士に依頼することが良いと考えられます。
弁護活動のイメージ例
所持・使用のケース
ご本人から事実関係、取調べ状況等を聞き取ったうえで、処分・処罰の見通しをお伝えしたうえで、方針を打合せいたします。違法薬物所持・使用の類型では、捜査の違法性が問題となるケースがままあるため、この点(逮捕経緯等)についても聞き取りを行い、捜査の違法性やこれが処分に与えうる影響についても可能な限りご説明をいたします。
嫌疑の内容を争っている事件であれば、不利な供述調書を作成されたり、不利な話が録画されないように取調べ対応の助言を行うとともに、自身の主張を裏付ける証拠(例えば、知人から預かった物に違法薬物が入っていたというケースでは、メール等の知人とのやり取りの記録など)の収集・保全活動を行います。他方、認めている事件の場合であっても、常習性や余罪などの処罰を重くする事情について警察官・検察官が予断をもって取調べに臨み、考えている筋書に沿った供述をさせようとするケースもみられますので、取調べ状況を適宜確認し、対応の助言(不適切な取り調べがされた時は抗議等も)を行いつつ、釈放された際の再犯防止環境の調整等を進めます。
なお、勾留が不許可となるケースも過去存在はするため、上記活動と並行して、裁判所に対して勾留を不許可とするよう(既に許可されている場合には、これを破棄するよう)求める活動を行います。
輸出・輸入のケース
ご本人から事実関係、取調べ状況等を聞き取ったうえで、処分・処罰の見通しをお伝えしたうえで、方針を打合せいたします。事実関係を争う場合、とくに違法薬物が他人から預かった荷物を隠されていたなどと主張して故意を争うケースについては、厳しい取調べが予想されるため、細かな接見を行って、精神状態や取調べの状況を確認し、取調べ対応の助言しつつ、その助言を貫徹できるようケアいたします。そのほか、証拠収集活動を行うのに並行して、取調べの際に不利な供述調書の作成や、録音・録画がされることのないように、少しでも違法・不当な取調べが疑われる場合には、抗議文・苦情申出等を行って、取調べの是正を求めるよう牽制をいたします。
ご料金
被疑者の認否等により、弁護士費用が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
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