外国人労働者が解雇された場合、在留資格(ビザ)はどうなるの?(前編)就職活動を行う場合の注意点
日本に適法に滞在している外国人は、基本的に、保有する在留資格にかかる活動をしていることが在留の前提となっています。
そのため、通常、在留資格に係る活動を継続して3か月以上(一部の高度専門職にあっては6か月)行わないで在留している場合、正当な理由がある場合を除き、法務大臣は在留資格を取り消すことができるものとされています(入管法22条の4第1項6号)。
また、在留期間の更新を行う場面では、在留資格該当性(本邦に滞在して予定する活動が当該在留資格に係る活動に該当するものであること)が審査されます。
そのため、就労系の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」や「技能」などの資格)で在留する外国人労働者が解雇・雇止めを受けた場合、在留資格に係る活動を継続していない、そのような活動をする余地がないとして、在留資格を取り消されたり、在留資格の更新が認められないといった不利益を受けてしまうのではないかということが懸念されます。
本コラムでは、そういった懸念に答え、解雇・雇止めをされた場合に在留資格はどうなるのか?就職活動を行うことはできるのか?と言った点について解説をいたします。
目次
1.会社都合退職の場合、就労意思があれば在留の継続はある程度可能
入管は、このような外国人労働者に関し、「雇用先の倒産・業務縮小等により、自己の都合によらない理由で解雇、雇止め又は待機を通知された場合」、以下のとおりの取り扱うことを定めています(令和3年7月19日時点)
- 本邦で就職活動中の者については、現に有する在留資格のまま、在留期限までの在留を認める
- 在留期限の到来後も就職活動を継続する目的で在留を希望する場合は、期限到来前まで就職活動を行っていることが確認され、在留状況に問題ない等許可することが相当であるときは、「特定活動」の在留資格が許可される
- 当該「特定活動」への在留資格については、在留期間の更新は認めない
すなわち、このような外国人については、就職活動を継続する場合には、在留期限までの在留を認める(取消は受けない)ものの、更新は認められず、特定活動の資格に変更したうえで数か月程度の猶予が与えられるという運用が採用されています。
2.就職活動を行う場合の注意点
就労制限がある外国人労働者は、上記2で述べた運用に従って就職活動を行う場合には次に述べるポイントに注意が必要です。
(1) 退職・採用時それぞれで入管への届出が必要
退職した場合、及び新たに雇用契約を締結する場合、当該事由発生時から14日以内にその旨の届出を行う必要があります(入管法19条の16)。
なお、保有する在留資格が高度専門職1号である場合、勤務先を変更するにあたっては在留資格の変更許可申請が必要になりますのでご注意ください。
(2) 不法就労にならないように注意
外国人を採用する会社が必ずしも在留資格のことを理解しているとは限りません。
そのため、採用後に命じる業務として、現在の在留資格では資格外就労に当たるものを予定することがありえます。
資格外活動を行った場合、会社の命令であっても外国人労働者が刑事処罰される可能性があり、更新の場面でも不利に斟酌されてしまいます。
(3) 就職活動中のアルバイトについて
就職活動中、生活費を捻出するためにアルバイトをしたいと考える方もいらっしゃると思います。
この場合、資格外活動許可を得ることにより、1週について28時間以内であれば、当該在留資格に係る活動に該当しない仕事に就くことができます。
ただし、ここにいう28時間とは、当該外国人が行う仕事全体で28時間以内である必要があるため、例えばアルバイトを掛け持ちする場合などでは、アルバイト一つ当たり28時間以内であればよいとはならないことにご注意ください。
3.終わりに
もっとも、就職活動を行うのではなく元の職場に復職することを求めたい方、就職活動が功を奏さず解雇を争いたい方もいらっしゃいます。
また、懲戒解雇を受け、会社都合退職として扱われない場合、上記2で述べたような取扱いの対象外になってしまいます。
そこで、次回は、外国人労働者が解雇の効力を争いたい場合に在留資格との関係でとりうる手段について、ご説明をいたします。