外国人労働者が解雇された場合、在留資格(ビザ)はどうなるの?(後編)在留資格を踏まえた不当解雇の闘い方
前編のコラムでは、外国人労働者に対する解雇・雇止めが在留資格に与える影響や注意点について説明をいたしましたが、就職活動を行うのではなく元の職場に復職することを求めたい方、就職活動が功を奏さず解雇を争いたい方もいらっしゃいます。
また、懲戒解雇を受け、会社都合退職として扱われない場合は、「特定活動」への在留資格変更は難しいと考えられます。
そこで、後編のコラムでは、解雇の効力を争いたい場合に在留資格との関係で外国人がとりうる手段について、ご説明をいたします。
目次
1.在留資格の取消前・在留期限前の解決を目指す
まず、在留資格の取消前、在留期限の到来前の解決を目指すことが挙げられます。
労働事件の訴訟は、訴え提起から終了するまでの期間が平均14.5か月(平成30年度の数値)と長期化する傾向にあるため、迅速な解決を目指すのであれば交渉又は労働審判を選択することが考えられます。
もっとも、交渉・労働審判のいずれも、相手方が争う姿勢を崩さない場合は解決に至ることはできません。
また、労働審判については、争点が複雑であるなどの場合、裁判所の判断(労働審判)を下すことなく終了してしまい、解決が図れないことがあります(労働審判法24条)。
2.いったん帰国して解決時に再入国する
次に、外国人労働者の方にいったん帰国していただき、弁護士と連絡を取りながら争うというのも方針として考えられます。
労働審判の場合、当事者への事情の聞き取りは第一回目に集中して行われるため、第二回目以降について当該外国人労働者が出頭する必要性は小さくなります。
もっとも、この方法でも、弁護士と対面での打合せができない、尋問のために日本へ渡航する必要があるコストがかかる、永住許可の要件である日本の継続居住が中断してしまう、在留資格を取得しなおす必要が生じるといったデメリットがあります。
3.労働契約上の地位保全の仮処分
最後に、訴訟を提起すること前提に、労働契約上の地位保全の仮処分を行うことが考えられます。
労働契約上の地位保全の仮処分とは、解雇により失われた労働者としての地位を、訴訟による解決まで時間がかかる可能性が高い事を考慮し、暫定的に復活させるものです。
この処分が認められるには、被保全権利の存在(解雇・雇止め紛争の場合、雇用関係の存在がこれに当たります)と保全の必要性を疎明(訴訟で必要となる「立証」よりもハードルを下げたもの)が必要とされています。
解雇時に労働者が行うことができる仮処分としては賃金支払いの仮処分もあるところ、賃金支払いの仮処分を申し立てれば労働者としての地位を暫定的に復活させる必要性は小さい(ない)として、保全の必要性が否定されることが通常です。
もっとも、外国人労働者の場合、労働契約上の地位を失うと、上記のとおり在留資格も失ってしまう危険があるため、労働契約上の地位保全の仮処分も認められることがあります(これを認めた裁判例として、東京地裁昭和62年1月26日決定:労判497号138頁があります。)
4.解雇を争う場合どのような手段を選択すべきか
以上のとおり、外国人労働者が解雇を争う場合、どのような手段をとるべきかは、事案の内容(複雑さ、長期化の見通しの有無など)、当該外国人の希望、資力等に応じてケースバイケースであると言えます。
そのため、どの手段をとることが適切かを確認するためにも、弁護士にしっかりと相談をすることをお勧めします。