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労働者性が認められることはないのか? 自己所有車で自動車運送業を営むドライバー(傭車運転手)の場合について弁護士が解説

新型コロナウイルスの流行により軽貨物を中心に運送業の需要が高まっているともお聞きします。
業務委託・請負で自動車運送をされている方には、自ら所有する自動車でお仕事をされている方も多いと思われます。
このような方々は、基本的に労働者と判断される余地がないように思われますが、このイメージは正しいのでしょうか。

先日のコラムでは、業務委託・請負という題名の契約を交わしても労働者と判断される場合が多々あることを前提に労働者と認定される場合のファクターを説明いたしましたが、本コラムでは、自己所有の自動車を使用して運送業を行うドライバーに労働者性が認められることはあるのかについて、最高裁判例等を紹介しながら解説をします。

このコラムは特に以下のような方におすすめ
  • 自社の運送・配送業務を専属的に受注する自動車運送業者を持つ会社の経営者・管理者の方
  • 受注した自動車運送業務について、外部の業者に再委託・下請家に出している運送業者の方
    委託先・下請先が「労働者」と認定され、予期していない負担を強いられるリスクを考える助けになります
  • 個人事業主として運送業務を受注しているが、受注先から締め付けが強いことに悩まれている方
    「労働者」として労基法、労災保険法の保護を受けられる可能性を考える助けになります

1 労働者性を否定した最高裁判決(横浜南労基署事件)

まず取り上げたいのが、会社との運送請負契約に基づいて、自ら所有するトラックで製品の運送を行っていた運転手の労働者性に関して、最高裁が労働者性を否定した横浜南労基署事件の存在です(最判平成8年11月28日集民180号857頁)。

⑴ 事案の概要

横浜南労基署事件の原告は、製紙会社から運送請負契約に基づいて製品の運送を行っていた運転手です。
裁判では労災保険給付の申請を認めるかに当たり、運転手である原告と行政との間で原告が労働者に該当するか否かが争われていました。
この事件の最高裁判決の前提となっている高裁判決の認定によれば、本件の契約内容や原告の働き方には以下のような特徴がありました。

  • 自ら所有するトラックを使用(ガソリン代、修理代、運送の際の高速道路料金、自動車保険料は自己負担)
  • 報酬は出来高払い制(トラックの積載可能量と運送距離によって定まる運賃表に基づいて決定)
  • 事実上、他の会社からの運送依頼を請けることが考えられない立場(「専属的な下請け業者と同様の地位」とも表現)
  • 業務についての指示は、原則として、運送物品、運送先及び納入時刻程度に限定(運転経路、出発時刻、運転方法等には及ばない)

⑵ 労働者性を否定した理由

以上の事情を前提として、最高裁は、以下のとおり述べてトラック運転手である原告の労働者性を否定しました。

右事実関係の下においては、上告人は、業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものである上、旭紙業は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、上告人の業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、時間的、場所的な拘束の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、上告人が旭紙業の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りないものといわざるを得ない。そして、報酬の支払方法、公租公課の負担等についてみても、上告人が労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事情はない。そうであれば、上告人は、専属的に旭紙業の製品の運送業務に携わっており、同社の運送係の指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻及び就業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定されることになること、右運賃表に定められた運賃は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも一割五分低い額とされていたことなど原審が適法に確定したその余の事実関係を考慮しても、上告人は、労働基準法上の労働者ということはできず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。

⑶ 判決の意味

横浜南労基署事件最高裁判決はあくまでその事件に認定された事情に基づいて判断された事例判断とされ、自己所有のトラック運転手(傭車運転手)の事案全般について労働者性を否定する意味を持つものとはされていません。
しかし、指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻・終業時刻は会社側により事実上決定されていたこと、運賃はトラック協会が定める運賃表によるものよりも15%低い額であったことなどの一般的に労働者性を認める方向に働く事情が存在したことを加味しても労働者性を否定したことに照らすと、傭車運転手に関して労働者性が認められることは極めて難しいとも考えられます。

2 横浜南労基署事件最高裁判決以降に労働者性を認めた裁判例の存在

もっとも、このような最高裁判決が出されて以降、傭車運転手に関して労働者性を認めたケースも存在します。
その一例が名古屋高裁平成26年5月29日判決です。

⑴ 横浜南労基署事件最高裁判決の事案との類似点

この事案では、運転に用いていたトラックの自己所有という点に加えて、以下のような上記最高裁判決と同様又は類似する事情が認定されていました。

  • 自ら所有するトラックを使用(ガソリン代、修理代、運送の際の高速道路料金、自動車保険料は自己負担)
  • 報酬は出来高払い制(会社が作成した運賃表に基づいて決定)
  • 契約上、会社の運送業務を専属的に行う地位にあった
  • 配送先、積載量、配送時間についての指示はあったが、ルートや休憩をとる場所、有料道路使用の有無などについては運転手で判断可能であった

⑵ 判決の内容

しかしながら、同判決は以下のとおり述べて、問題となった運転手の労働者性を肯定しました。

以上の(3)ないし(6)によると,Eら車持込み運転手は,被控訴人の配送業務について具体的な仕事の依頼,業務従事の指示等に対する諾否の自由がなく,勤務場所及び勤務時間の拘束を受け,その業務を再委託するなどの代替性も認められていないなどの点で,被控訴人の指揮監督下における労働に従事していたといえることに加え,兼業が禁止され,ほぼ毎日被控訴人の配送業務に従事するなど専従性が認められること,株式会社F及び被控訴人がEを従業員として社会保険に加入させていたこと等からすると,Eについては,配送業務に用いるトラックを所有し,自己の危険と計算の下に配送業務に従事し,株式会社F及び被控訴人の就業規則が適用されていなかったことを考慮しても,被控訴人の指揮監督下において労務の提供を行い,被控訴人から,その労務の提供に対する対償として本件傭車契約に基づく報酬の支払を受けていた者であるというべきであり,労働基準法にいう「労働者」に該当するものと認められる。

3 傭車運転手の労働者性はどのように考えるべきか?

筆者が確認したところ、傭車運転手について労働者性を肯定した裁判例は多くは見当たりませんでした。

もっとも、上記名古屋高裁判決の事案は問題となった運転手を社会保険に加入させていたという特徴があるものの、判示からはどのような事情が上記最高裁判決と結論を左右させたかは明らかではありません。
事業者側にとって傭車運転手の労働者性を肯定された場合に多大な負担が生じうることに照らすと、できる限り労働者性を積極づける事情を否定するよう注意して契約することが求められます
その判断は専門性の高いものであるため、多くの傭車運転手に外部発注をされるのであれば、一度契約内容や働かせ方に関して弁護士等の専門家のチェックを経ることをお勧めします。

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